【キッチンカーのHACCP】義務化で必要な対応と確認したいポイント
【キッチンカーのHACCP】義務化で必要な対応と確認したいポイント
公開日:2023年9月15日 2024年1月12日 更新食品衛生法の改正によって、2021年6月からキッチンカー(移動販売)でも「HACCP(ハサップ)」が完全義務化されました。
HACCPは法律で定められた衛生管理なので、不備があった場合には改善指導があります。
ですが、HACCPの重要性は十分理解しているものの、どのようにキッチンカーに取り入れればよいのかわからない人や、自分の衛生管理が正しいのかどうか不安な人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、「キッチンカーとHACCP」をテーマに解説します。
HACCPの目的、キッチンカーでの衛生管理に活用するためには、衛生管理計画の作成、確認するべきポイントなどを紹介します。
目的から実践まで押さえてあるので、ぜひ活用して下さいね。
HACCP(ハサップ)は「衛生管理の見える化」
「HACCP(ハサップ)」は、一言で言うと「衛生管理の見える化」です。食中毒や異物混入などが起こる可能性を少しでも下げ、食の安全を維持することを目的にしています。
その業態を問わず、基本的にはどの食品等事業者全員に義務付けられています。キッチンカー(移動販売)にも必要です。
HACCPは計画書作成・実行・記録の3つが大切
「HACCP(ハサップ)」を自身のキッチンカー(移動販売)に導入するまでの流れは、下記が一般的です。
(1)HACCPを取り入れた「衛生管理計画」を作成する。
(2)(1)を実行する。
(3)(2)を記録・確認する。
衛生管理計画には、「一般衛生管理」と「重要管理計画」の2種類があります。
一般衛生管理は、手洗いや清掃、殺菌など、どの飲食業者にも共通する衛生管理のことです。
重要管理計画は、調理工程上の注意点や確認ポイントなので、メニューごとに異なります。
いずれも記事後半で詳しく作成方法を紹介しているので、ぜひ参考にして下さい。
HACCPをキッチンカーに取り入れるには
HACCP(ハサップ)をキッチンカー(移動販売)に導入するための、具体的な流れと方法について解説します。
【1】メニューごとの手引書を読む
最初に、自分のキッチンカー(移動販売)のための衛生管理計画を作成します。それにあたって最も大切なのは、厚生労働省の「手引書」です。
厚生労働省のホームページには、どのようにしてHACCP(ハサップ)を取り入れた衛生管理を行うのかをまとめた手引書が、メニューごとに載っています。
まずは自分が提供するメニューの手引書を選び、しっかりと読みましょう。衛生管理計画はこれに沿って作成・実行してゆきます。また、衛生管理計画の作成も、「手引書に記載されていること」と「自分の作業」とを比較し、計画に反映・導入します。
参考:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(厚生労働省)
【2】一般衛生管理を作成する
「一般衛生管理」は、清掃や手洗い、害虫対策など、基本的な衛生管理が中心です。どの食品等事業者にも共通する内容がほとんどなので、作成や実行もそれほど難しくないでしょう。
一般衛生管理は、手引書の後半に載っている記載例と記録フォームをそのまま活用すると、効率よく作成できておすすめです。
見本の記録フォームと同じように、一つの作業を「いつ・どのように・問題があったとき」に分けて確認できるようにしましょう。
主なチェックポイントについては、下記の段落を参考にして下さい。
一般衛生管理(1)原材料の受け入れ
原材料の納入時に、外観や匂い、包装の状態や表示などを確認します。問題があった場合は、返品や交換を行います。
一般衛生管理(2)冷蔵・冷凍庫内の温度
冷蔵庫・冷凍庫の温度を確認します。正常に動いていない場合は、修理依頼や購入等の必要があります。
一般衛生管理(3)交差汚染・二次感染の防止
調理中、器具を用途別に使い分けているか、使用後は洗浄・消毒できているかなどをチェックします。
一般衛生管理(4)器具の洗浄・消毒・殺菌
使用後、すべての器具等の洗浄・すすぎ・消毒・殺菌などができているかをチェックします。
一般衛生管理(5)従業員の健康管理
始業前や作業中に、従業員の体調や手の傷、服装のチェックを行います。消化器症状がある場合は、調理できません。
一般衛生管理(6)手洗いの実施
調理施設に入る前、盛り付けの前、金銭を触った後、清掃後、トイレ後など、様々なタイミングで衛生的な手洗いが求められます。
また、手洗いが十分ではない従業員がいた場合は、すぐに行わせる必要があります。
【3】重要管理計画を作成する
「重要管理計画」は、メニューによってそれぞれ異なります。HACCP(ハサップ)では、調理の際の「温度」でグループ分けをし、管理します。
加熱しない食品
「加熱しない食品」は、加熱を一度も行わないままお客さんに提供される食品や食材のことです。加熱による殺菌ができないため、食品に細菌などがつくと、そのままお客さんの口に入ってしまいます。
他のグループに比べて、かなり厳密な管理が必要です。
キッチンカー(移動販売)で多い食品は、生野菜のサラダや果物です。また、ネギや海苔、調味料などもこのグループに含まれます。
【重要管理計画の例】
・原材料を納品したら、そのまま冷蔵庫で保管する。
・提供まで30分以上かかる場合は、冷蔵庫で保存する。
・生肉と同じ場所で仕込みや調理を行わない。
加熱してすぐに提供する食品
「加熱してすぐに提供する食品」は、加熱による殺菌後すぐにお客さんに食べてもらうので、他のグループに比べるとリスクは多少下がります。
キッチンカー(移動販売)に多い食品は、たこ焼きやからあげ、焼き鳥などです。
食品や食材が「何度」「何分」加熱すれば安全なのかを、1つずつチェックリストに記載します。
【重要管理計画の例】
・加熱したらすぐに提供する。
・加熱後は、細菌が増えない温度で保存する。
・加熱後の食品は、清潔な器具や手袋などで触る。
加熱と冷却を繰り返す食品
細菌の中には、加熱しただけでは殺菌できない種類がいます。その場合は、「加熱と冷却を繰り返す」ことでやっつけるようにします。
「加熱時の温度・時間」だけではなく、「短時間で冷却する」「再加熱の温度・時間」の3つが重要です。
キッチンカー(移動販売)でこの調理工程がある食品は、カレーやスープ、冷製ラタトゥイユなどです。
「加熱と冷却を繰り返す食品」には、冷製ラタトゥイユのように提供時には冷たい状態のものや、スープのように再加熱して提供するものも含まれます。
せっかく加熱しても、常温でゆっくり冷ましてしまうと細菌は爆発的に増えます。そのため、短時間で急冷させるための具体的な工夫と、その目安となる時間も大切です。
【重要管理計画の例】
・加熱後は常温で長時間放置せず、短時間による冷却を行う。
・加熱後は浅いバットに移し、氷水で急冷する。
・各食品や食材の加熱時間と温度、冷却と温度を正確に確認しておく。
まとめ:キッチンカーのHACCPは相談窓口の利用も◎
キッチンカー(移動販売)では、HACCP(ハサップ)を取り入れた衛生管理計画を作成し、それを実行・確認する必要があります。
まずは、「一般衛生管理」と「重要管理計画」の2種類の衛生管理計画を作成します。作成する際には、厚生労働省のホームページにある「手引書」を参考にしましょう。
特に、重要管理計画はメニューごとに製造工程やチェックポイントなどが異なるので、手引書はとても重要です。
それ以外にも、都道府県にはHACCPを取り入れた衛生管理のための相談窓口が開設されていることもあります。不安を感じる場合は、ぜひ気軽に相談してみて下さいね。
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